皆さんは、特許出願をしたことがありますか?
特許出願は、開発設計者が思考して発明したものを、世間に認めてもらうものです。
なんか難しそう..と思うかもしれません。
でも、開発設計を普通にやっていれば意外と簡単に出願できてしまいます。
このページでは、どこに特許になるネタがあるか など 少しのコツを伝えられたらと思います。
特許出願は意外と簡単にできますよ。
開発設計中に装置類に持たせた特徴を文章化する感じですね..。
特許が必要なのはなぜか?
発明者は発明に際して時間と費用と労力を費やしています。その対価を優先的に発明者に得てもらうため、特許制度が制定されています。
この制度がない場合、発明を模造(コピー)した人に資金や製造能力や販売ルートがあれば、発明の苦労を全くせずとも利益を簡単に得ることができることになります。こうなると発明者は発明に要したものを回収できず不利益を被ることになります。
また、発明による費用回収が見込めないのであれば、発明者は発明の完成度を「まあまあ」にしてしまうことも考えられます。技術の発展に不利益が生じることになります。
このようなことにならないようにするためにも、特許が必要なのです。
不当な権利主張から発明の権利者を守り、技術の発展を促す目的が特許制度にはあるのです。
「他人のものはオレのもの」というジャイアン(ドラえもんの登場人物)のような主張を認めないことを法律化したものとも言えます。
開発設計者としては、やる気を出させてくれる制度ですね。
特許を出願することが求められるのはなぜか?
会社に雇われている発明者であれば、発明の権利は会社に帰属することになります。ですから、特許を出願することによって、会社に権利をもたらすことになります。
特許を出願すると、会社は出願日から20年間に渡って権利を独占することができるようになります。
模造品が出回ればそれに対して告訴することができます。
特許の権利により、会社は市場の独占と競合他社の排除ができることになります。
それで、開発・設計者には「使命」「ノルマ」として特許出願が課されるわけです。
特許を考えるのは開発設計のいつからか?
開発設計の初期から特許出願を意識して、開発を進めます。
開発設計の初期は、開発しようとしている技術が先行技術として公知になっていないか、他社が権利を保持していないか必ず調べます。
もし、他社が権利を保持しているなら、それを回避する方法を検討しながら開発を進めることになります。
もしこれを怠ると、開発設計が進んだ段階で他社特許に抵触していることが判明した場合、大変なことになります。
ドラマ「下町ロケット」の中で「帝国重工」が特許がらみで大変な事態になった事例が印象的です。この一場面は、特許出願の正しいプロセス(帝国重工の開発で実証試験がうまくいったこと)を踏まえて出願しようとして調査したら、一歩遅くて大変なことになったというもので、先行技術調査を怠っていたと言う訳ではないですが、権利をいかに早く取得することがとても重要で、抵触すると技術取得に巨額の金銭を払う可能性が生じることになるなど、とても大変な事態に陥ることを教えてくれています。
それで、特許出願は、開発の初期段階から十分な先行技術調査をし、できるだけ早く出願することが重要と言えます。
特許になるネタはどうすれば出てくるか?
・競合他社や先例が全くない状況であれば、今開発設計している内容のほとんどを特許出願できます。
(この場合の特許請求範囲は、請求項1に開発設計している分野の広い範囲を包含するキーワードを使うことができます。特許請求範囲が非常に広い出願にできるので、他社の参入余地をなくすことができたりします。)
この場合、沢山の特許を出すことができます。私も半年間隔で何件も出願して権利化できたことがあります。新規開発をやっていると、特許はとても出しやすいです。
・公知になっている先行技術(他社特許や自社特許)がたくさんあり、その狭間を開発設計している場合には、その狭間に当たる公知になっていない部分が特許として出願できる部分です。
このときのネタを見つける方法は、FTAの結果などを利用するとうまくいったりします。
FTAでは数種類の対策方法が出てくるので、最も効果のあったものを請求項の1ぐらいに持ってきて、それ以外の対策方法は実施例に入れたり、別特許で出願する..と言う感じです。FTAはこちら。
わたしも、先行技術がたくさんある中で 開発設計をしていた時期がありますが、見つけたネタのほとんどが公知になったものに近く 「想定できる発明」と言う返答が帰ってきて、ほとんどが出願に至らずホントに大変でした。こういう時は、あきらめて別のアイデアを探したほうがいいです。
公知例の狭間を狙った特許出願の場合は、特許の審査請求をすると、「公知例から容易に想像できる発明」と拒絶査定が帰ってくることもよくあります。
こうなることをあらかじめ予測して請求項を多くし、請求項のいくつかが拒絶になっても、残された請求項の内容を使ってうまく補正(修正)して出願すれば、権利化できることが多いです。
こういったことは時々あるので、出願前の原稿作成を特許事務所にお願いする時に、弁理士さんと戦略を練る必要があります。(弁理士さんの力量によるところが大きいですけどね..。)
・ほかにネタを見つける方法は、第七感を働かせること..ですね。第七感はこちら。
特許の文章は全部開発設計者が書いているのか?
特許の文章は、ほとんど弁理士さんが書いています。言葉の選び方で、権利の強さとか範囲とかニュアンスが微妙に違うらしいです。訴訟になってしまったら、素人の文章では即負けてしまうのではなかと思います。
というわけで、開発設計者の皆さんは、特許にしたい発明の特徴を明確に箇条書きにして、所属する会社の知的財産部や特許事務所に相談するほうがいいです。
出願原稿が出来上がったら査読することになりますが、文章や字面にツッコミを入れるのは避けて、その文章が現す概念・考えが合っているかどうかを確認するほうが良いです。
書いてくださった弁理士さんは文章書きのプロですからね..。
特許出願すると、何かいいことあるの?
所属する会社にもよりますが、出願すると報奨金を会社からもらえます。
もし、出願した特許が会社に利益をもたらしたら、それに見合った報奨金をもらえます。
知人に2ケタ万円もらった人や4ケタ万円弱もらった人もいます。(もう全部消えたらしいですが..。)
あとは、この国の特許制度が存続する限り、出願者の名前が発明者として残ります。生きた証・会社在籍の証という感じですね。
それから、外国人で特許出願して特許取得した人で日本に在留する場合、出入国管理上の優遇制度で高度人材になるそうです。海外でも、日本人に対してそういった制度がある国もあるかもしれません。
在留資格にレベルがあって、レベルによって在留期間の長さが違うらしいです。国際結婚や帰化が在留資格の最長ですけどね。
特許出願をしてどうだったか?
特許出願は開発設計の最終段階ごろに、開発設計したものが世間にリリースされる前までにします。
この時期は非常に忙しい時期ですが、思考がカタチになって見えるようになり、思考が発明として認められて権利を取得できたりするなど、自分の開発設計の成果を感じる時期でもあります。
自分が過去に出願した特許を見ると、あのときはこうだった..と、色々な経験が今でもよみがえってきます。そう考えると、特許出願は、自分の職務履歴を証明するものになるんでしょうね..。
いろいろ悩んでひねり出した内容の出願よりも、一瞬のひらめきで思いついた内容の出願のほうが、あれよあれよと言う間に特許になる..と言う感じです。このときは、ひらめきの凄さを感じました。ひらめきを意図的に起こす秘訣はコチラ
装置開発の初期はたくさん特許を出せても、装置の出荷後対応へフェーズが移行してくると、とたんに特許出願できるネタがなくなってしまうことが多かったです。
出荷後に起こる設計不具合対応をしている期間は、ほとんど出願できなかった苦い思い出があります。あまり面白くなく暗いイメージですね。
それで、特許をたくさん出願したいと願っている人であれば、新規開発をしているチームに移籍させてもらうのも手かもしれません。
開発系の業務が会社になく、自身に発明者になりたいという志しがあるのであれば、別の会社を探すのも手かもしれません。
実は、わたしも開発寄りの設計を続けたかったので転職しました。やっぱり発明が特許として権利化されると凄くうれしいです。みなさんにも味わってほしいと思います。
発明が特許として権利化されると、凄くうれしいですよ。
開発設計が苦しくても、続ける力をもらえる感じです。
みなさん、ネタ探し頑張ってくださいね!